中日ドラゴンズ

「どえぐ。」工藤監督の秋季キャンプ――正に“昭和のポテンシャル”

「なりたい自分」が、ドラゴンズを変える

工藤公康監督がドラゴンズの監督に就任してから、初めての秋季キャンプ。

そのキャンプを見ながら、僕は就任会見で工藤監督が話していたことを思い出していました。

工藤監督がまず大切にしていたのは、選手とのコミュニケーション。

一方的に指示するのではなく、選手としっかり話をする。

そして何をするにしても、

「選手のために考える」

という視点を持つ。

さらに、

「選手自身が、どんな選手になりたいのか」

そこを大切にする。

今の自分には何が足りないのか。

何を伸ばしていけばいいのか。

それを選手と一緒になって考えていく。

そして、もうひとつ。

反復練習の大切さ。

そんな話をしていました。

これを頭に入れながら、秋季キャンプを見ていて、まず感じたこと。

「今までになく、厳しいキャンプをやっているな」

これが第一印象でした。

そして、もうひとつ。

「あれ? 選手より工藤監督のほうがキレてない?」

もちろん、悪い意味ではありません(笑)。

選手に声をかけ、動きを見て、何度も確認する。

そして監督自身が身体を使って、選手にやって見せる。

その姿を見ていると、選手以上の熱量を感じました。


「こうしてみよう」を自分の身体で教える

これまでドラゴンズのキャンプを見てきて、僕が感じていたことがあります。

監督やコーチが選手にやらせる。

そして、

「ああでもない」
「こうでもない」

と声をかけながら練習していく。

もちろん、それも指導のひとつだと思います。

でも、工藤監督の秋季キャンプは少し違って見えました。

まず、

「こうしてみよう」

と選手に説明する。

そして監督自らが身体を使って、やって見せる。

言葉だけではなく、自分の身体で教える。

選手が理解したら、今度はそれを繰り返す。

一度できたから終わりではない。

何度も何度も反復する。

そして、

身体に覚えさせる。

これを見ていて、僕は思いました。

「これじゃないか。」

これこそ、僕が思う理想の指導なのかもしれない。

ただ練習量を増やすだけではない。

ただ厳しくするだけでもない。

説明する。
やって見せる。
選手にやらせる。
そして、やり続ける。

ここが大事なんだと思います。


「できるまで」ではなく「できても、やり続ける」

そして、ひとつ気づいたことがあります。

それは、

「できるまでやる」のではない。
「できるようになっても、やり続ける」

ということ。

反復練習というと、できないことをできるようにするためのものだと思いがちです。

でも、プロ野球選手にとっては、それだけではない。

一度できたことでも繰り返す。

身体に染み込ませる。

そして、それを自分の技術として維持し、さらに磨いていく。

そう考えると、これは秋季キャンプだけの話ではありません。

プロ野球選手である限り、続けていくべきことなんじゃないか。

秋季キャンプで何かを身につけて終わりではない。

シーズンが始まっても続ける。

シーズンが終わっても続ける。

そして、また次のシーズンへ向けて続ける。

「やり続ける」

工藤監督の秋季キャンプを見ていて、僕が強く感じたのは、そこでした。


反復練習は、プロとしての「基礎」になる

ここで、もうひとつ僕が思ったことがあります。

工藤監督が言う反復練習は、単に同じ練習を繰り返すという話ではないのではないか。

プロ野球選手としてやっていくための基礎を作る。

その土台があって、その上に選手それぞれが持っている素質やセンスが乗ってくる。

そう考えると、これまで伸び悩んでいた選手たちにも、違った可能性が見えてきます。

例えば、根尾昂。

そして石川昂弥。

持っている素質は間違いなくある。

センスもある。

それでも、プロの世界で思うように伸びきれない時間がありました。

もちろん、何が原因だったのかを僕が断定することはできません。

ただ、

「持っているものを発揮するための土台」

という部分は、考えてみてもいいのではないか。

高校野球の選手時代には、本人たちがどこまで意識していたかは別として、基礎を繰り返し積み上げていた。

そして、その積み重ねが、やがて日本一につながるような選手を生み出していった。

プロに入ったからこそ、もう一度その土台を作る。

その上に、プロでしか身につけられない技術や経験を積み重ねる。

そして、そこに素質やセンスが乗ってくる。

そう考えると、工藤監督の秋季キャンプは、

「選手を鍛えるキャンプ」ではなく、選手の土台を作り直すキャンプ

なのかもしれません。


違えば、また考える

そして、もうひとつ大事なのが、「これでいいのか?」を繰り返すことだと思います。

やってみる。

でも、何か違う。

そう感じたら、選手とコーチが話す。

コーチと監督が話す。

監督もまた選手と話す。

そして、みんなで考えて、またやってみる。

違えば、また考える。

その繰り返し。

選手・コーチ・監督が一緒になって模索していくスパイラル。

これが続いていけば、強くなるに決まっているんじゃないか。

もちろん、こうしたことは以前からドラゴンズでもやってきたんだと思います。

ただ、今回の工藤監督を見ていて僕が違うと感じたのは、

「こうなりたい」
「こういう選手になりたい」
「そのためには今、何が必要なのか」

そこを中心に考えているように見えることです。

そして、その結果としてチームが強くなり、チームの成績につながっていく。

これが、工藤監督やコーチが描く、

「こんなチームにしたい」

という理想なんじゃないでしょうか。


理想が、ポテンシャルに火をつける

「理想とか考えだけで、強くなるわけじゃないでしょう」

そう思うのも当然です。

野球は技術も必要。

体力も必要。

経験も必要。

だから、メンタルだけで強くなるわけではありません。

でも――

そのポテンシャルを引き出すために、心が果たす役割は決して小さくない。

「こうなりたい」という思いは、眠っている力に火をつける。

それは、

ポテンシャルに触れるための着火剤

になるのかもしれない。

そして、苦しい練習や思うように結果が出ないとき。

心が折れそうになったときには、

「それでも、こうなりたい」

という思いが、もう一度前を向かせてくれる。

それは、

気持ちをつなぎ止める接着剤

になるんじゃないか。

だからこそ、

「なりたい自分」

を考えることが大切なんだと思います。


妥協しない。そして、先送りしない

そして、もうひとつ感じたことがあります。

それは、妥協しないこと。

「今日はこれくらいでいいか」

「明日やればいいか」

そうやって少しずつ妥協してしまえば、本当に強くなっていけるのか。

よく言われる、

「明日やろうは馬鹿野郎」

という言葉。

工藤監督の秋季キャンプを見ていると、まさにそういうことなのかもしれないと思いました。

今できることを、今やる。

足りないものがあるなら、向き合う。

違うと思ったら、また考える。

そして、できるようになっても、やり続ける。

妥協しない。
先送りしない。
やり続ける。

その積み重ねが、やがて選手自身の力になり、そしてチームの力になっていく。


選手、盛り満開まであと半年

秋季キャンプを見て、僕が感じた工藤監督の印象は、

「選手を鍛えている監督」だけではありませんでした。

「選手が自分自身を鍛え続けるための土台を作っている監督」

なのかもしれない。

そして、その土台の上に、選手それぞれが持っている素質やセンスが乗ってくる。

誰が伸びるのか。

誰が殻を破るのか。

誰が自分の「なりたい選手」に近づいていくのか。

まだ、工藤ドラゴンズは始まったばかりです。

でも、来季開幕まで、あと半年。

この冬に土台を作り、

その上で選手たちが自分の力を花開かせる。

選手、盛り満開まであと半年。

その花がどんな色になるのか。

僕は、そこを楽しみに見ていきたいと思います。


ドラゆうのプロへの道【エピソード0】

すべては、ドラゆうが生まれる前から始まっていた

子どもができたら――

まずは、野球をやらせたい。

それが、ずっと僕の中にあった思いでした。

そして、もうひとつ。

なんでも器用にできる、左利きの子だったらいいな。

そんなことを考えていました。

もちろん、その時はまだ、どんな子が生まれてくるのかも分かりません。

そんな中、2012年。

大谷翔平がドラフトで指名された年に、ひとりの男の子が誕生しました。

名前は――

ユウセイ。

そう。

ここから始まる物語の主人公、

「ドラゆう」の誕生です。

まだ野球を始めてもいない。

まだプロを目指してもいない。

でも、振り返ってみると――

すべては、ここから始まっていたのかもしれません。

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